人事が教える 音大生のための自己分析

就職活動を始めると誰もがぶつかる最初の壁「自己分析」。

インターネットで調べたり、本を読んだりしながら、手探りでやっている方も多いのではないでしょうか。

 

自分なりにやってみた分析結果に確信をもって、「わたしは○○ができます」と言うことができていますか?

自分を正しく理解しておくことは、就職活動以外の場面でも、自分が進むべき方向をみつける道しるべになります。

卒業後のキャリアの選択肢が幅広い音大生だからこそ、しっかりと自己分析をすることで様々なメリットがあるんです。

 

そこで今回は、「人事が教える 音大生のための自己分析」と題して、ZOOMを使用したワークショップを開催しました。

なんで自己分析が大切なの

そもそも、自己分析って何のために行うんでしょうか。

就活生のための情報サイトには、「採用選考を突破するために面接官を納得させる」ことが、自己分析の目的だと書いているところが多いかと思います。

 

もちろん、これも間違いではありません。

内定を獲得するためには、自分のことを論理的に説明して、企業に「この人を採用したい」と思ってもらう必要がありますから、自分について知っておかなくてはいけません。

 

でも、それだけで終わっては勿体ないんです。

内定を獲得することがゴールになってしまうと、就職活動のためだけに自己分析をする状態になりがちです。

 

本当に大事なのは、就職活動ではなく、実際に働き始めてからですよね?

働き始めてから後悔しないためには、自分にとってどんな仕事が理想なのか、どんな働き方が合っているのかを理解しておく必要があります。

自分にとって「納得できるキャリア」をみつけるために、自己分析が効果的なんです。

 

納得できるキャリアってどんなもの?

いま、世界で「Ikigai」という言葉が使われ始めているようです。

この図は、起業家・ブロガーのMarc Winnさんが、2014年に掲載した『What is your Ikigai?』という記事が初出だとされています。

 

日本語の「いきがい」という言葉に出会ったものの、うまく英語に翻訳することができなかったことから、図によって可視化したものだそうです。

日本語を理解するのに英語の図を使うというのも、ちょっと悲しい気もしますが。

「どうやったら、いきがいを感じるのか」を言葉で説明するは難しいので、Ikigai図を拝借したいと思います。

 

Ikigai図では、「いきがい」が以下の4つの要素で構成されていると分析しています。

・LOVE(好きなこと)

・GOOD AT(得意なこと)

・PAID FOR(お金になること)

・NEEDS(世界が求めていること)

 

いきなり、「あなたのいきがいは何ですか?」って言われても、答えるのは難しいですよね。

4つの要素に分解してそれぞれを考えて、真ん中にくるものをみつけることができれば、自分の「いきがい」、つまりは「納得できるキャリア」が見えてくるんです。

 

自己分析でみつける「きがい」

「いきがい」を構成する4つの要素をどうやって見極めればいいのでしょうか。

 

「好きなこと」「得意なこと」をみつけるためには、自分自身について知ることが必要になります。

そこで、今回のテーマ「自己分析」が真価を発揮するんです。

 

一方で、「お金になること」「世界が求めていること」をみつけるためには、世の中の状態や動きを知ることが必要です。

そのために、就職活動では「企業研究」や「業界研究」をすることが、とても重要になってきます。

また、新聞やニュースで世の中の動きにアンテナを張っておくこと、大学の就職課やミュージックコンパスを活用して情報を得ることも、手助けになると思います。

 

自己分析には2種類の方法があります!

自己分析の方法には、大きく分けて「相対的評価による分析」と「絶対的評価による分析」の2種類があります。

 

相対的評価による分析は、他の人と自分を比べることによって、自分の資質を見つける手法です。

例えば、AさんはBさんに比べて行動力があるよね、といったものですね。

他の人と比べて、自分がより優れている資質をみつけることができるため、相対的評価による分析は「得意なこと」を探すのに適しています。

 

一方で、絶対的評価による分析は、「過去〜現在の自分を振り返り、自分と対話をする」ことによって、自分の資質をみつける手法です。

分析をすることによって、「好きという感情が生まれる理由≒価値観」を言葉にすることが得意な分析方法ですので、相対的評価による分析は「好きなこと」を見つけるのに適しています。

 

価値観って何だろう

ひとは誰でも、価値観をもっています。

ピンとこないと思う方もいるかもしれませんが、今まで無意識なものも含めて、価値観を判断基準とした無数の選択をしてきているはずです。

 

部活は何にしよう、どこの学校に進学しよう、アルバイトは何にしよう、などといった、自分の人生に大きな影響を与えるかもしれない選択も、みなさんは経験しています。

明日はどの洋服を着て出かけよう、今日のお昼ごはんは何食べよう、なんて日常の選択をするときにも、自分の中で何かの判断基準に照らして、無意識かもしれませんが選択をしていますよね。

 

でも、この判断基準ってそんなに意識する機会がないですし、自分がどんな「価値観」を持っているのか把握できていない方が多いのではないでしょうか。

価値観とは、何かワクワクしながら行動をするときに、その源泉となっているものです。

人に言われたから仕方なく行動するときって、ぜんぜんワクワクしませんよね。

この「価値観」を言葉にすることが、「好きなこと」をみつける近道になります。

 

相対的評価による分析ってどうやるの?

相対的評価による分析については、自分一人で進めるのは難しいと思います。

「わたしは○○さんと比べて真面目だ」といった分析を自分でしても、第三者からも同じ様に見えているとは限りません。

自分の進むべき方向を決める大切な自己分析ですから、思い込みは可能な限り排除できるのが理想です。

 

そこで、相対的評価による分析を行う場合には、

・第三者に「他己分析」お願いをする方法

・ツールを活用する方法

をお勧めします。

 

他己分析ってなに?

他己分析というのは、相手に自分がどの様に見えているのか教えてもらうことで、自分について知る方法です。

自分のことをよく知っている、家族や仲のいい友人にお願いをすることで、客観的な視点で自分を知ることができます。

 

自分では認識できていない強みや長所って、たくさんあるものです。

就職活動をしていると、誰しも不安になりますよね。

第三者から強みや長所を指摘してもらうと、自分に自信が持てるようになります。

採用面接などの場面でも、客観的に見た裏付けのある強みや長所の方が、自信をもってPRできるのではないでしょうか。

 

長所を教えてもらうことも重要ですが、勇気を出して、自分のネガティブな部分についても、質問をしてみましょう。

自分が「苦手なこと」を知っておくことも、「得意なこと」をみつけるヒントになるはずです。

 

また、あまり親しくない方に他己分析をお願いするは、自分の「得意なこと」をみつけるという目的では、効果が薄いと思います。

ただし、面接対策として自分の第一印象を知りたい、という場合には、知り合って間もない方にお願いをするのも有効です。

 

自己分析ができるツールってどんなもの?

一方で、性格診断や適性検査といった、質問に答えると自分の資質がわかるツールを活用する方法も、相対的評価による分析ではお勧めです。

性格診断や適性検査も、多くの母数と比べて性格や適性の傾向を分析しているものですので、相対的評価と言えます。

 

とはいえ、血液型占いや動物占いで自分の進むべき方向を決めるのは、ちょっと心もとないですよね。

少しでも信頼性の高いものを受けたいところですので、「ストレングス・ファインダー」というツールをお勧めしたいと思います。

 

『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』という書籍を購入すると、診断を受けるのに必要なアクセスコードが付いてきます。

2,000円程の自己投資で、信頼性の高い分析結果が手に入りますよ。

※アクセスコードは1回のみ使用可能ですので、中古の書籍を購入すると受けられないことが多いです。ご注意ください。

 

他にも、WEB上で受けられる診断ツールは、有料・無料を含めてたくさんあります。

中には、いまひとつ信用ならないツールも存在しますので、何種類か受けて比べる、鵜呑みにし過ぎない、といった自己防衛を心掛けてください。

 

ストレングスファインダーについては、こちらの記事も参考にしてください。

音大生必見! ストレングスファインダーで自分の強みを理解する

 

相対的評価による分析ってどうやるの?

先述のとおり、相対的評価による分析は、過去を振り返って自分と対話をする手法です。

 

過去を振り返ることができればいいので、絶対的評価による分析については、本当に色々な方法があります。

「自分史」や「ライフラインチャート」を作成することが一般的なのではないでしょうか。

 

今回は、「ミュージックコンパス流自分史」として、なるべく短時間で効率よく行える方法、自分一人で行っても価値観を特定しやすい方法をご紹介したいと思います。

 

自分史ってなに?

自分史は文字どおり、自分がこれまでに経験してきた出来事、自分の歴史をまとめたもののことです。

作り方についても、作文をする方法や、年表を作る方法など、どうやって作っても構いません。

とはいえ、何でもかんでも書きだすと、とても時間がかかってしまいます。

 

そこでミュージックコンパスでは、「感情」をキーワードにして、強く記憶に残っている出来事を書きだし、分析する方法をお勧めしています。

これは、人の記憶が「感情」と密接に関係していることが理由なんです。

 

先々週の火曜日の晩ご飯に、何を食べたかすぐに思い出せますか?

毎日の食事を手帳に書き留めてでもいない限り、難しいのではないかと思います。

でも、初めてのデートで食べたものや、特別な日のお祝いに食べたものだったら、思い出せる方も多いのではないでしょうか。

どうしても食べられなくて、つらい思いをした給食のメニューなんてものも、なかなか忘れられないですよね。

 

すべて同じ食事という過去の経験ですが、嬉しい、つらい、といった感情と結びついている出来事の方が、強く記憶に残ります。

「価値観」は過去の経験によって形成されていますから、感情を伴って強く記憶に残っている出来事の方が、より大きな影響を与えていると考えられます。

逆に言うと、特に感情の動かなかった先々週の晩ご飯のような出来事は、「価値観」の形成には、あまり関係していないはずです。

 

自分史を書いてみよう!

では、感情をキーワードにした、「ミュージックコンパス流自分史」を作成してみましょう。

小学校から大学までの出来事を振り返り、その中で「心を揺さぶられた出来事」や「感情が大きく動いた出来事」を書きだしていきます。

 

書きだす内容は、以下のとおりです。

思いつく限り、なるべく多くのエピソードを書きましょう。

1 それは、どんなエピソードでしたか。
2 その時、あなたはどんな感情になりましたか。
3 その出来事は、いつ起こりましたかしたか。
4 その時、あなたはどこにいましたか。
5 その時、あなたは誰といましたか。
6 あなたはその時、どんな風に行動しましたか。
7 あなたはその時、どんなことを考えていましたか。

 

 

すべての質問について答えを書きださなくても問題はありませんので、特に思いつかない質問があれば、飛ばしてしまいましょう。

正解はありません。難しく考えずに、どんどん書くのがポイントです。

まずはじめは、「今までの人生で1番嬉しかった出来事」あたりを書いてみるといいと思います。

 

一つ目のエピソードを書くのはちょっと難しいかもしれませんが、記憶というのは一つ思い出すと芋づる式に出てきますので、始めればどんどん書けちゃうはずです。

 

エピソードを書き終えたら分析です!

思い出せる限りのエピソードを書きだし終わったら、つぎに、それぞれの思い出の共通点を探していきます。

 

これまで、自分の価値観を言葉にはしていなくても、潜在的に何かの価値観や判断基準によって、物事を選択してきたはずです。

見つかった共通点から、「なぜ」その時に感情が動いたのかを考えることで、自分が持っている価値観が見えてくるはずです。

 

例えば、幸福や感動といったポジティブな感情に絞ってみると、友達と過ごした思い出が多かったとします。

では、どうして友達といると幸福だと感じるのでしょうか。どんな友達と一緒にいると幸福を感じるのでしょうか。

 

他にも、達成感を感じたエピソードが多く出てきたとします。

どんな要素があると達成感を感じるのでしょうか。一人で取組むこと、チームで取組むこと、どちらにより達成感を感じるのでしょうか。

色々な切り口から自分と対話をし、共通する点(≒価値観)を見つけていきます。

 

仕上げは言葉の置き換え!

最後に、見えてきた価値観を、他の言葉に置き換えてみましょう。

就職活動をするのであれば、「働くこと」を前提とした言葉に置き換えることで、どの様な企業が好きになれるのか、いきがいをもって働くことができるのかが理解できるはずです。

 

例えば、自分史を分析した結果、「共通の目標を持った友達と過ごし、お互いの成長を感じるのが楽しい」という価値観が見えてきたとすると、

・同僚との友好な関係を築くことができること

・成長意欲の高い同僚がいること

・会社の目標が社員に浸透していること

などが、働くうえで重要な価値観になるはずです。

 

ここまでできれば、ミュージックコンパス流自分史による自己分析は完了です。

多くのエピソードを書きだすほど、自分の色々な価値観が見えてきます。

 

たくさん書くのにはそれなりに時間がかかりますが、エントリーシートを作るときに使えるエピソードの洗い出しにもなりますので、なるべく早い時期にチェレンジしてみることをお勧めします。

 

ライフラインチャートについて

自分史に加えてもう一つ、絶対的評価による自己分析の手法として一般的なのが、ライフラインチャートを作成する方法です。

ライフラインチャートの作り方については、こちらの記事を参考にしてくださいね。

あなたの人生を可視化する「ライフラインチャート」の作り方

 

今回のまとめ

自己分析の役割は、「好きな事」「得意な事」を明確にして、「納得できるキャリア」を築くことにあります。

音大生のみなさんは、卒業後に歩むキャリアの選択肢が多様です。

 

就職するにしても、音楽家になるにも、レッスンプロを目指すにも、自分の価値観を言葉にしておくことで、自分がどんなことにワクワクするのか、いきがいを感じる仕事は何なのかが明確になります。

 

就職活動をしないとしても、音大生こそ、自己分析をしておくことが効果的なんです。

「いきがい」を構成する4つの要素を一つひとつ理解して、自分の言葉で説明できるようにしていけば、「納得できるキャリア」が見えてくるはずですよ。

 

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今回、紹介をした「ミュージックコンパス流自分史」について、専用のワークシートをご用意しています。

ご希望の方は、以下のフォームからご登録をお願いします。

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その他、ワークショップの情報など、音大生のキャリア形成に役立つ情報をお届けしています。
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