音大生の就職先として人気の高い保険業界。
身近に保険会社で働いている先輩などがいればお話を聞くことができますが、音大生にとってOB訪問の機会を得るのはなかなか難しいものです。
そこで、大手生命保険会社での勤務経験をお持ちの小堀千瑛さんをゲストスピーカーとしてお招きし、ZOOMを使った座談会形式のイベントを開催しました。
保険会社のお仕事の内容や、採用選考突破のためのアドバイス、お給料の話まで、和やかな雰囲気の中でお話を伺うことができました。
本日のゲスト
小堀 千瑛さん
慶応義塾大学文学部卒業。3歳でピアノを始めたが、演奏するよりもブルグミュラーの練習曲に1曲ずつ、イメージに合わせた詩を書くのが楽しかったという文学少女全開の幼少期を過ごす。大学では国文学を専攻する傍ら、学生新聞サークルの副代表としても活躍。サークル活動で保険業界に取材をしたことがきっかけで関心を持ち、新卒で大手生命保険会社に入社。その後、人材系企業を経て、現在はIT系企業にて勤務している。
就職先に保険業界を選んだ理由を教えてください。
大学では学生新聞を作るサークルに所属していたんですが、取材をとおして保険会社の方にお話を伺い、「保険会社は職種のデパート」と言われたことがきっかけで、興味を持ちました。
就職先として選んだ決め手は、人とのコミュニケーションが好きなので、長いスパンでお客様とお付き合いをする保険会社の仕事に魅力を感じたことです。
保険業界以外にはどんな会社に応募しましたか
金融業界やメーカーに応募をし、銀行からは内定をいただくことができましたが、メーカーはだめでした。
わたしは「モノ」に対するこだわりがあまりないんです。
メーカーの面接では、選考過程が進むにつれて「商品への思い」を語ることが求められ、苦戦したのを覚えています。
メーカーの選考時期が教育実習と重なってしまい、あまり数を受けられなかったのも理由の一つです。
生命保険会社ではどんなお仕事をしていたんですか
新卒で配属されたのは、神奈川県の事務センターにあるシステムを開発する部署でした。
営業になると思い込んでいたので、配属先を聞いたときは驚きました。
システム開発といっても、自分でプログラミングをしていた訳ではなく、システムの設計を考える仕事をしていました。
例えば、法律が変わった時には、システムをこんな風に変更する必要があるよね、お客さんに通知するためにはこんな機能が必要だよね、ということを考えるのが仕事です。
次に、埼玉県で個人商店や零細企業をターゲットとした営業になり、車で担当地域を回り、飛び込み営業をしていました。
その後は滋賀県に移り、保険外交員(いわゆる「生保レディ」)の採用・育成を担当する部署に、課長として赴任しました。
仕事の内容や勤務地が変わるのは一般的なんですか
保険業界や金融業界の働き方としては、数年ごとに必ず仕事が変わるのは一般的だと思います。
特に大手は、どの会社に入ってもコロコロ仕事が変わるというのは同じではないでしょうか。
色々な仕事を経験した方が成長する、と考えているんだと思います。
近頃は日本でも転職することへのハードルが下がっていますが、大手企業ではまだ、新卒で入社して定年まで働くという考え方が根強い印象です。
実際、わたしの同期は入社から10年ちょっと経ちますが、まだ6割以上が残っています。
結婚して家庭に入った方もけっこういるので、転職を選んだ方はそんなに多くないと思います。
転職をしたきっかけは
採用・育成の仕事が好きだったので、人事としてのキャリアを築いていきたいと考えたためです。
二社目の人材系企業でも、現在働くIT系企業でも、人事担当者として入社をしました。
女性のキャリアについてどう考えますか
女性活躍推進法の影響もあるのか、色々なメディアで活躍している女性の姿が取り上げられていますよね。
そこに登場する女性たちって、スターバックス片手に丸の内を歩くとか、多くの部下に慕われているとか、ステレオタイプな「バリキャリ」だと思うんです。
そんな人は一部で、高いお給料をもらっていなくても、楽しく仕事をしている女性はたくさんいます。
わたしは転職をして、管理職ではなくなり、お給料も前職より下がりました。
でも、自分の好きな人事の仕事をしている今の方が、自信を持って働くことができていますし、胸を張って歩けると思っています。
選考突破のためのアドバイスをお願いします
「なんでうちの会社に入りたいの?」というのは、業界を問わずによく聞かれますよね。
保険業界では、会社が違っても取り扱っている商品に大きな違いがないため、準備をしておかないと論理立てて答えるのが難しいのではないでしょうか。
しっかりと会社ごとの特徴を理解したうえで、その会社でなければいけない理由を考えておくことが重要です。
業界地図などをしっかり確認しましょう。
また、大手企業では複数回のリクルーター面接を突破する必要があるのもポイントです。
リクルーターには、入社2~6年目程度の若手社員が対応していますが、人事の採用担当とは違い、人を見るプロではありません。
営業・運用・事務など、どんな仕事をしているリクルーターに当たるのかわからないので、どんな相手にもそれなりに話ができないと、突破は難しくなります。
営業職のリクルーターに運用しか興味がないと言えば、おそらく落ちますよね。
そのため、会社にある仕事を広くイメージしておく必要があると思います。
同じ営業でも、法人相手と個人相手では異なりますし、地域による違いもあります。
入社したら色々な仕事をしなければいけない事を前提に、準備をしてください。
就活をする音大生にメッセージをお願いします
卒業後、仕事をしていく時間はとても長いです。
好きになれない仕事を選んで、努力できない自分を嫌いになってはもったいない。
「どんな自分でありたいか」「何をしている自分が好きか」を考えて、仕事を選んで欲しいと思います。
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